NHKスペシャル -慢性腰痛2015/07/13 12:10

 昨夜のNHKスペシャルのテーマは「慢性腰痛」であった。私は腰痛持ちではないが、妻は時々腰が痛いといって接骨院に通っている。私とてこの先腰痛に悩まされることになる可能性は十分にある。というわけで、興味を持って番組を見た。

 内容は、驚くべきものであった。誤解を恐れずに極論すると、番組内での主張は「慢性腰痛の多くは『気のせい』である」というものであった。

 まず、「慢性腰痛」とは何かというと、骨や筋肉などの異常が見当たらないのに腰の痛みが3ヶ月以上続く状態を言うらしい。何故3ヶ月かというと、椎間板ヘルニアなどの腰に痛みをもたらす症状は3ヶ月もすれば痛みを感じないレベルまで自然に改善するからということらしい。

 では何故何ヶ月も、時には何年も腰痛に苦しむ人がいるのか、それは患部、つまり腰に原因があるのではなく、脳の働きに問題があるということらしい。

 腰に限らず(だと思う)体が痛くなると脳の「痛みを感じるネットワーク」が興奮し、その結果人は「痛い」と感じる。その部位の状態が改善されると、脳の「DLPFC」という部位が働き、その興奮状態を抑えるらしい。しかし、何らかの原因でDLPFCにストレスがかかり続けると、その部分が疲れてしまい、働きが鈍ってしまう。その結果、興奮状態が収まらず、痛みを感じ続けてしまうということらしい。

 で、DLPFCの働きを鈍らせてしまうストレスとは何かというと、その一つとして「痛みに対する恐怖」があるという。つまり、本当は痛くないのに「痛くなったらどうしよう」という恐怖のせいで、痛みを感じてしまうというのである。

 ではその対策としてどうするのか、番組で紹介していたのは「認知行動療法」。つまりある程度の運動や、痛くなりそうな姿勢をとり、そうやっても大丈夫なんだという経験を積ませ、恐怖を取り除くというものであった。その結果DLPFCの働きが正常化し、痛みがなくなってくるという。

 認知行動療法というと、うつ病に効果があるということで、最近耳にするようになっていたが、まさか腰痛にも効果があるとは意外であった。

 オーストラリアでは、国を上げてのキャンペーンを行い、権威ある学者や大臣が「ヘルニアは短時間で自然に治癒します」といったTVCMを流した所、かなりの効果があったらしい。これを見ていた息子が「ある意味洗脳だよね」と言ったのには笑ってしまったが・・・。

 考えてみると、貼り薬や塗り薬のCMで、腰痛の恐怖を煽るようなものが昔はよくあったが今ではそういったCMは流れていないような気がする。これもそういった最近の研究成果を反映してのことなのかもしれない。

 自分自身が腰痛持ちでもないのにわざわざNHKスペシャルを最後まで見たのは、しばしば腰を痛める妻に見せたかったからであった。まあ夕食の後ということで、妻も最後まで見てくれたのだが、見た感想を聞くと「私の腰痛は原因が分かっているし、接骨院に行ったりしてしばらくすると治るし・・・」と、にべもない返事が返ってきた。まあ確かに彼女の場合、しょっちゅう腰が痛いとは言っているが、慢性腰痛という状態ではない。というわけで、あまり興味を惹かなかったらしい。意気込んでいただけに何だかちょっと拍子抜けしてしまった。